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2006年2月
スケッチと既成概念
動物園でゾウを見つけると、子どもたちはいっせいに「わーゾウさん!」「かわいーい!」と声をあげます。お鼻の長ーいゾウさんは、動物界最高の人気ものです。
ところで、私はこの1月の中ごろのある日、ケニアのアンボセリのサバンナの只中にサファリカーを停めて、そびえ立つキリマンジャロ山を描こうかな、とサンルーフから首を出して大きな水彩紙をひろげていました。
と、その時です、「ズズーン」という地鳴りとともに私のすぐ前に突然何やら怖ろしくでかい何かが立ちはだかったのです。
上の方から小さな黄色い眼で冷ややかに私を見おろしています。
その「何か」が、オスのアフリカゾウだと判るまでたぶん20秒位かかったような気がします。私の目前に存在するのは、あの「かわいいゾウさん」のイメージとはまるで違う、ぜんぜん別のモノ、見たことも聞いたこともない巨大で不気味な未確認物体というかモンスターというかわけの分からないシロモノです。
実物と相対してスケッチする、とは、その実物を描きとるという闘いだけではなく、私がすでに持っているそのモノについての既成概念(先入感あるいは情報といってもいい)との闘いなのだということを私は思いしらされました。
そして、目の前の化物は、「かわいいゾウさん」とは縁もゆかりもない、私にとっての完全な「初物」であると思ったとき、全身の血が沸きたち、もうすぐさま描かずにはいられない気分になったことを感じたのでした。

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