2007年1月

線描きの快感

 カンボジアの巨大遺跡アンコール・ワットへ行き、思いきり「線」描きの快感を味わってきました。
 何十とある遺跡群の中の一つ「タ・プローム遺跡」に私は的を絞り、結局そこだけに5日間通うことになりました。
 タ・プローム遺跡は、石積された古代遺跡に添うように成長したスポアン(榕樹)とよばれる巨木が多いことで知られています。
 訪れた2日目のこと、私はタ・プロームの木の中でも、一二を争うようなガジュマルの巨木を見て一目惚れしてしまいました。
 まるで神経細胞のように交差し、入り組んだ木の根は「さあ、線で描くなら描いてみな」と言わんばかりです。

タ・プロームの巨木(ワットマン76×57cm)
 私は木に近づいて、根に触れてみたのですが、おどろくことに、一本ずつの根がすべて違った手触りと表情をもっているのです。
 私は大判の紙をタテに構え、ピグマ2mmのペンで、中央の右上から左下へと行く斜めの「線」をまず思いきりよく引くことからスタートしました。
 2日間ここに通い、計約7時間で線描きが完成。
 描く内に、この一本の木の中には男線もあれば女線も、動き線もあり、また、エキセントリック(奇異)な線もあればパセティック(愁い)な線もあることを感じました。つまり宇宙のすべてが秘められているのです。
 絵の出来上がりはどうあれ、私としては線の快感に酔い、線を用いる誇りを強く感じることができたアンコール・ワットの旅ではありました。

←目次へ