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2008年3月

桜スケッチの現実

「いい天気だ、今日は桜を描くぞォ!」」と買いたてのF10ワットマンなど抱えて、私はいそいそと出かけます。
「あれ?」いざ現場へ着いてみると、何かイメージと違うのです。桜はきれいだけれど、ゴミが飛びかっています。家族連れの花見客でいっぱい。ヤキトリの匂いが漂ってきます。「置き引きに注意しましょう!」公園のアナウンスがひっきりなしです。
 とりあえず軽いスケッチをと、桜に近づいて描き始めたら、おばちゃんたちに囲まれ、花粉症のクシャミを背中に浴びせられました。
 一枚の絵を描くということは、人生の現実から逃げることではなく、逆に現実の只中に入るということなのですね。
 そう腹をくくらないと、スケッチなどできません。
 何が起ころうと、逃げることなく、すべてを受け入れ受けとめた上で、静かにありのままの自分を保てたときにこそ、集中力を得て、白い紙の上に最初の線が引けるのでしょうね。きっとそうです。
 ……などと思いつつ、これからスケッチに出かけるところです。
 今日はどんな「現実」が私を待ちうけていることやら。


<今月の絵>


「新宿駅前のハナミズキ」(460×380mm)永沢まこと
 3月後半のある夕暮れ時、新宿駅東口のアルタ前の歩道に白いハナミズキが咲いていました。通行人の誰ひとりとして花に気づかないようです。建設中のコクーン・タワーの背後の空が、一瞬あでやかな群青色に変わって、真っ白い花を浮き立たせてくれました。

「ニューヨーク3番街の夜」(1928)ジョン・スローン
 私の好きな大都会の夜景を描いた作品を3点ご紹介します。これはNYの地下鉄がまだ高架線だった頃。夜の女たちがクルマを止めているようです。

「25セント・ムービー」(1936)レジナルド・マーシュ
 マンハッタンのあやしげな映画館の前のあやしげな人たち。新宿歌舞伎町の夜にちょっと似ています。

「吉原夕景」(1925)木村荘八
 大正末期から昭和初期の夜の色街を描き続けた木村荘八の傑作です。夜の灯りを描くには、影の暗さをいかにうまく描くか、ですね。

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