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2009年8月 

「線」と「面」との国際結婚?

 「線」でスケッチ=写生を続けていくと、かならず「線」だけでは物足りなくなりますね。まず色を塗りますが、塗り込む内に影をつけ立体感や遠近感をつけたくなる。つまり「線」は常に「面」を求める傾向があるのです。
 ここで100年前の20世紀初めにパリで活躍した知る人ぞ知る画家アンリ・リヴィエール(1864〜1954)をご紹介します。
 リヴィエールさんは商人の子としてパリに生まれたスケッチ大好き少年だったようです。同世代のピカソやロートレックと違って絵はほとんど独学。印象派っぽいけっこうリアルな水彩画を描いていましたが、22歳の時に日本の広重、北斎の風景版画と出会ってショックを受けました。自分で板を彫ってパリ風景などの木版画をつくったり、リトグラフ(石版画)をつくり始めたのです。版画ですから浮世絵と同じように「線」で基本のカタチをとり、色づけで「面」を表現したわけです。
 つまりリヴィエールさんが果たした役割とは、西洋絵画の伝統である「面」の側から、東洋の「線」に近づいたということです。
 東洋絵画の「線」のDNAを持った私たちが、これから「面」をどうとり込んでいくかを考える上で、きわめて刺激的な作家ではないかと思っています。

<今月の絵>
<モンマルトルからのパリの眺め・1900(525×820mmリトグラフ)
A 線を主体にして描いているので、油絵で描かれたモネやユトリロのパリ風景とは全く違った新鮮さがあります。「イラスト風」風景画の創始者といってもいいかもしれませんね。
<モンマルトルからのパリの眺め(部分)>
B 動きのある人物をよく描き入れるところなどは、広重や北斎から学びとったのかも…。
<ブルターニュ風景(水彩)>
C ふだんはこんな感じのスケッチをやっていたようです。
<ブルターニュの港(リトグラフ)>
<スケッチに出かけるリヴィエールさん> <建設中のエッフェル塔(リトグラフ)>
D 北斎の「富獄三十六景」に倣って、リヴィエールさんが38歳の時に完成させた「エッフェル塔三十六景」の中の一枚。(※「エッフェル塔三十六景」は東京のニューオータニ美術館に所蔵されており、時々公開されます。)