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2009年10月 

現場スケッチに生きた杉本健吉さん

 私がいつも手元に置いて眺めている画集のひとつ「余生らくがき―杉本健吉画文集―」(求龍堂)をご紹介したいと思います。
 杉本健吉(1905〜2004)は、岸田劉生、梅原龍三郎に師事して洋画家としてスタートしました。45歳のときから始めた、吉川英治作「新・平家物語」の「週刊朝日」連載のための挿し絵によって、一躍その名を知られるようになりました。洋画家としてのみならず、今でいうイラストレーターの先覚者の一人でもあったのです。
 99歳で他界されるまで、杉本さんは洋画とか挿し絵とか、デザインなどのジャンルに全くこだわることなく作品を創りつづけた、正真正銘の「絵描き」でした。そして、その創作の原点となったのは、“素描、つまり現場の地べたに座り込んで描くスケッチ”だとしています。
 「素描は、その時その時の一期一会のもので、しかもタブローの従属的位置にあるものではない。いわゆる本画のための準備ではない。そのままが終着点なのである。」と杉本さんはこの本の中でのべています。

<今月の絵>
地上絵(74.5×96.0cm) 杉本健吉
 空地に絵を描いている二人の少女と、その向こうを走るクルマ、そして歩道橋などをスケッチしたもの。
12枚の画用紙をつなぎ合わせて描いており、左下には当時93歳の杉本さん自身の姿があります。
 絵の題材はどこにでもある。画材も紙も手近にあるもので構わない、とにかく描きたいから描く…。
という純粋な「絵描き魂」に思わずハッとさせられる絵です。
蘇州(46.7×74.5cm)
これも現場でクレヨンで描かれた絵です。白い壁が水に映って美しい。
なんと自由さに溢れたスケッチでしょう。
すぐにでも蘇州へ行って絵を描きたくなります。
(中国敦煌の路上でスケッチする75歳の杉本さん)
「ともかく描く。手が動いて、それから精神が後からついてくるのである」
これは愛知県美浜にある杉本美術館(おすすめです!東京からですと日帰りでも可能)で見た作品。
北京のホテルから紫禁城を描いた50号位の絵です。左端にお茶目な杉本さんがまたまた登場。
杉本美術館に展示されていたスケッチブック。 スケッチ大好きな人におすすめです。