今月のひとこと2009年12月
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2009年12月 

「線スケッチ」はカンタンではありません。

 「線スケッチで絵を描くと、カンタンに絵が描けるようになるそうですね?」と、ある集まりで聞かれました。
 「とんでもないですよ。カンタンに絵が描ける方法なんてどこにもありません。線スケッチは一番カンタンではないほうかもしれませんよ。」と私は答えました。
 私が実行してきた「線スケッチ」は、絵を描く「方法」ではなく、いわば「考え方」です。これを要約すると……。
 1.常に「実物」を直接観察して「写生」を行うこと。プロ:入門者を問わずこの地道な作業こそが絵を描く上での基本でありまた、原点である。
 2.写生は「線」描を中心に行うこと。エンピツなどを用いてものの立体感(リアリズム)をとらえる「面」描よりも、個人のものの見方(主観)がハッキリと表れる「線」描こそ、描写の基本である。
 3.上の2つの考え方によって、「観察力(ものを視る力)」と「描写力(もののカタチを描く力)」とを、とことん愚直に、そしてめっぽう楽しく磨き続ける。
 ということです。もう一つ加えればこの考え方を実行することによって、「絵を描くこと」を長年の商業主義やら、えらそうな権威主義から、「絵を描きたい」と思う人間の手にとりもどすということです。
 カンタンなことではないと思っています。

<今月の絵>
若い女性のデッサン ボッティチェルリ
 私は線を大ざっぱに3つに分けて、勉強するように心がけています。
1.力強く、激しい意志を表す「男線」 2.やさしくデリケートな気持ちを表す「女線」 3.もののさまざまな動感を表す「動き線」の3つです。
 先月紹介したヴァン・ゴッホの線は「男線」の例ですが、今月ご紹介は、絵画史上もっとも美しい「女線」の描き手の一人といえるボッティチェルリさんの線です。
右のデッサンの、首から肩にかけての肌ざわりある線。柔らかいジョーゼットのような服の線は、私が何度模写してもマネができません。
 左の絵の女性の編み込んだ上でピシリと締めた線もメリハリが効いています。
 「女線」の極意は、線への心の込め方と、もう一つ力の抜き方にあるように思われます。
ラ・プリマベーラ(部分) ボッティチェルリ
 やはり女線のきわみは女性の髪を描く線です。このたとえようもなく優美な髪の線を、ボッティチェルリさんはどんな気持ちとどんな手ぶりで描いたのでしょうか。
若い女性のデッサン レオナルド・ダ・ヴィンチ
 絵画史上屈指のデッサン力をもったダ・ヴィンチさんの髪の線を見てください。みごとな「面」描による顔に比べ、まるで気のぬけた、カタチばかりの髪の線の平凡さにはガッカリさせられます。女線の悪いお手本ですね。